過去の作品を再利用するサンプリング、一連の流れを持つものを解体しランダムにつなぎ合わせて新しいものを作るカットアップ、アレンジや再構成をして元と異なったバージョンを作るリミックス、いずれも1970年代に確立したとされる音楽・表現技法である。これらを経て80年代になるとアシッド・ハウスが中心となった音楽ムーブメント「セカンド・サマー・オブ・ラブ」が起きることになるが、『交響詩篇』はそのムーブメントの再現を1993年の文化体験に重ねつつアニメで目指したものだったと京田・佐藤両氏は表明している。
再現を目指した結果『エウレカセブン』という作品群は、劇中でアシッド・ハウスやロックが流れ、音楽やスポーツといった既存の用語が作品用語に転用され、過去の他作品のみならず『エウレカセブン』の旧シリーズをも模倣し素材として組み込んでいく、サンプリング/カットアップ/リミックスを包括し体現する〈シミュレーショニズム〉の作風になっている。
作品の模倣性については制作スケジュールの効率化、あるいは「思いつくことはだいたいやりつくされてオリジナルは存在しない」「開き直って好きなもので作ろう」という動機が表明されているのであるが、それもまた前衛表現であらゆる様式と実験をやりつくされてシミュレーショニズムへと至る音楽と表現の状況に相似している。
作中においてもオリジナルの存在に対して、人間ではない者、英雄ではない者、特別ではない者、自他がイメージしている通りではない者などが、「
まがい物」という言葉や「
イマージュ(想像)」「
トゥルース(真実)」などのネーミングで強調され多く扱われている。
なお『交響詩篇』制作当時には意欲的にネーミングの転用を試みていたが、その後の『ハイエボ』などではエウレカセブンらしさを出す目的、作品のカラーを維持するためのサービス的にネーミングを行っていると京田は述べている。