[The Ghost in the Machine]
司令クラスター内の図書館ダイアンが書架から手に取った本。
1967年にアーサー・ケストラーが『The Ghost in the Machine』として出版した哲学書。1969年にぺりかん社より『機械の中の幽霊 -現代の狂気と人類の危機-』として邦訳されている。

万物に見られるヒエラルキー、部分的な存在の集合が上層の「全体」を形作っているが、下層の部分的な存在もまた無数の「部分的な存在」によって形作られているという、全体と部分が合一した無数に続く階層構造の一部分をケストラーは全体子〈ホロン〉と称している。このヒエラルキーの下層の部分的問題が上層の全体的問題を引き起こすことや、逆に下層の流動性が上層の進化をもたらすこと、〈ホロンの不安定性〉などについて論じている。

ダイアンが開いた箇所は第4章「不可分と可分」にある「図式についてのノート」の末部から、「無機的システム」の項にかけてのページ。下記の箇所に鉛筆で傍線が引かれている。
生物体を構成している階層性を、器官、組織、細胞、細胞器官、巨大分子等々と下の方へたどっていくと、どこまでいっても底というものはなく、生命に対する古い機械論的なアプローチから期待されるような最終的構成要素はついにみつからない階層性は、上の方向へ向かってと同じように、下の方へ向かってもその末端は開いたままなのである

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NOTE

「機械の中の幽霊」という言葉は、一個の個人に魂と肉体の二つが存在しているとする実体二元論を哲学者ギルバート・ライルが批判した言葉。ここでいう魂は脳によって生成された実体を持たないものではなく、肉体などと同様に実体のあるものとされている。ライルは肉体が機械的な容器であり魂も同様に機械的な容器であるのなら、魂を動かしているものは何か、機械の中に幽霊でもいるのかという旨で批判した。

士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』の英題「GHOST IN THE SHELL」はこの言葉と、ケストラーの本の題名に由来する。押井守によるアニメ映画化では情報生命体・人形遣いは主人公・草薙素子に対して自分と融合することで、身体という「部分」から解き放たれて「全体」である情報ネットの世界へ赴く行為を「さらなる上部構造にシフトする」と表現して勧誘する。

* [an][学芸][ハ行][47] * []キカイノナカノユウレイ[]

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